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6. 「目的語」って何?

Hanako washes tomatoes well.

郷センセ郷センセ:  今日も生徒は凡太か。まずは前回のおさらいからだ。
「オイラは毎晩よく寝ているよ」
を英語にすると?
凡太 「毎晩?」「よく?」「寝る?」
そんなのやりましたっけ?
「よく寝る」は good sleep?

goodは「よい」っていう形容詞だな。それにsleepがついてるから、このsleepは「眠り」っていう名詞だな。
だからまあ、good sleepは「よい眠り」「しっかりした睡眠」「熟睡」ってことで、
I have a good sleep every night.
ってやればバッチグーでOKなんだけど、ここでは動詞+副詞で言ってみようか。
「よく寝る」「寝る」という動詞の後ろに「よく」という意味の副詞をつければいいな。
「よく」とか「うまく」とか「しっかり」っていう意味を表す副詞はwellっていうのがある。便利な副詞だからよく使うよ。 goodの副詞だと思えばいい。
「寝る」は動詞でもsleepだな。
だから「よく寝る」は?
凡太 sleep well ……ですか?

そだね~。「毎日散歩する」はwalk every day。「家にいる」ならstay home。同じ形だな。
動詞+副詞。後ろの副詞が前の動詞を修飾している、説明している、っていう形。
で、「毎日」はevery day だろ。「毎晩」は every night でいい。これもひとかたまりで副詞的な働きをしている言葉だな。every dayみたいに時を表しているから、文の最後につけたほうが自然だな。
だから……、
凡太 I sleep well every night.
……ですか?

そだね~。
I walk with Pochi every day. と同じ形だな。
じゃあ、「ハナコは毎晩よく寝ている」は?
凡太 ……あ! それ、この前やった「三単現」ってやつですね!
ハナコは三人称単数。毎晩っていうのは日常的なこととか習慣とかを言っている「現在の文」だから……。
Hanako sleeps well every night.

そだね~。ハナコは神経図太いんだね~。寝る子は育つ。まあ、ハナコはおばちゃんかもしれないけど。
じゃあ、同じ形で、「ハナコはトマトをうまく洗うね」はどういえばいい?
凡太 「洗う」は……washですか? カーウォッシュとかのウォッシュ。だから……、
Hanako washs tomato well.

おお、期待通りの答えだね。
そうなりそうなもんだけど、そうはならないのが英語のいやらしいところなのよ。
正解は、
Hanako washes tomatoes well.
ってなるんだ。
まず、tomatoは名詞だけど、名詞には単数形と複数形があって、複数を表すときはsをつけるっていうのは習っただろ?
「靴」を英語でシューズ(shoes)っていうのは、もう日本語化しているから誰でも知っているけど、これは複数形で、単数なら「シュー(shoe)」なんだ。片っぽだけならaをつけて、a shoeだな。でも、靴ってのは普通は左右の足の分、2個で1組だから、shoesっていう複数形が当たり前になっている例だな。
この「トマトをうまく洗う」の場合のトマトも同じようなことだね。
単数ならa tomato ってaがつくね。特別なトマトなら the tomato ってこともあるかもしれない。でも、ここでは「トマトというもの」っていう一般的なものとして言っているだろ。そういうときは単純に複数形にすればいい。トマトというもの全般、ってことだね。
で、tomatoの複数形はただsをつけるだけじゃダメで、esをつける。発音は「トメィトゥズ」みたいな感じ。
三単現だから動詞のwashにsをつけるって気づいたところはぐっじょぶだけど、washという動詞も、sをつけるんじゃなくてesをつけるんだ。

腹立つだろ、英語って。
凡太 ……はい。めんどくさいっす。

そう。めんどうくさい。メン、ドウ、コテくさい。
でも、そう決まっているんだからしゃあない。
じゃあ、面倒くさがらずに、どんなときにsじゃなくてesをつけるのかっていう、その法則を覚えておこうか。

まず、washみたいに、shで終わる名詞の複数形や動詞の三単現の形はsじゃなくてesをつける。
同じように、chで終わる語もesをつける。
発音が「シュ」とか「チ」とかで終わる語だな。
「じっと見る」という意味の動詞 watch はsじゃなくてesをつける。watch ⇒ watches だな。
watchは「腕時計」っていう意味の名詞もあるけど、あれも複数形になると watches ってesをつける。
s、x、oで終わる語もsじゃなくてesをつけるのが基本。
バス(bus)の複数形は buses
箱(box)の複数形は boxes
トマト(tomato)の複数形は tomatoes

……っていう風にね。

いちばんややこしいのはyで終わる語だ。
母音字+yで終わる語と子音字+y で終わる語では違うんだ。
母音っていうのは大雑把にいえば「ア・イ・ウ・エ・オ」のことだ。英語では「ア」もいくつかの発音があるけど、まあ、なんとなく分かるだろ。
だから「母音字」ってのは、具体的には、a i u e o のことだな。
「母音字+y」で終わっている名詞の複数形や動詞の三単現のsは、普通にsをつけるだけでいい。
例えば、「遊ぶ」とか、スポーツやゲームを「する」っていう意味の play は、a+y つまり「母音字+y」で終わっているから、三単現の形も普通にsをつけるだけでいい。

I play baseball.
He plays baseball.
Pochi plays baseball.
凡太 ポチが野球やるんっすか?

代走くらいできるだろ。
それはいいから、ちゃんとポイントを聴けよ。
子音字、つまり母音字(a, e, i, o, u)以外の字+yで終わる語は、y を i に変えて es をつける。
studyはd+y……つまり子音字+yだから、yをiに変えてesをつける

I study English.
He studies English.
Pochi studies English.

ポチだってoneとか言えるだろ。twoは難しいけど……。

「子音字+y」で終わる名詞、動詞の例をいくつか挙げておけば、


……なんてのがあるな。
ついでに、sをつけるだけでいい母音字+yの例も挙げておけば、

……なんてのがパッと思い浮かぶかな。
あと、稀にだけど、単数形と複数形が同じっていう名詞もあるんだよな。
プロ野球のチームで、中日はドラゴンズ(dragons =龍)、読売はジャイアンツ(giants =巨人)って、複数形だけど、野球はチームスポーツで一人じゃできないからだな。ところが広島はカープスっていわないで、「広島カープ(carp =鯉)」だろ。なんでだろう、って思ったことない?
凡太 ないっす。カープの意味も考えたことなかったっす。

carpは魚の鯉(コイ)だけど、なぜかこれは単複同形っていって、単数形と複数形が同じなんだ。複数になってもsはつかない。
似たようなのに、sheep(羊)ってのもあるな。sheepsってならないで、複数でもsheepのままなんだよな。
英語ってほんといやらしいよな。

まあ、こういう細かいルールは自分で覚えろ。基本となる語順の話とは直接関係ないからな。

ただ、ここでものすごく重要なことを教えるぞ。これは語順の話だからすごく大事だ。語順大事……
凡太 ごーじゅんじセンセの教え……ですね。

お、おお。分かってるじゃね~か。

ゴホ。……で、何が大事かっていうとだな、さっき、なんとなくサラッと
Hanako washes tomatoes well.
っていう文をやったわけだけど、これって、今までの
Hanako sleeps well every night.
とか、
Hanako walks with Pochi every day.
っていう文とは根本的に違う構造の文だって気がついたか?
凡太 ……??? いえ、分からないっす。同じように思えますけど……。

じゃあ、もっと分かりやすい例を出そうか。
runっていう動詞は、「走る」っていう意味だったな。
I can run fast. なら、「俺は速く走れる」だな?
凡太 はい。最初にやりました。

で、runには「走る」という意味だけじゃなくて、何かを「走らせる」とか、機械を「動かす」、会社なんかを「経営する」なんていう意味もあるんだ。
He runs a hospital.
なら、「彼は病院を一つ経営している」っていう意味になる。

車を「走らせる」は、普通は drive a car だろうけど、模型自動車みたいなのだったら run を使ってもおかしくない。
He can run the car fast.
なら、
「彼はその車を速く走らせる(操縦する)ことができる」
みたいな意味になる。
He can run fast.
の run と、
He can run the car fast.
の run の違いって分かるか?
凡太 よく分からないっす。

おいおい。ここ、すごく大事なんだよ。よ~~~~~く考えろ。
He can run fast.のrunは、自分で走っているわけだよな。heっていう主語が、つまり自分自身が走ってる。
でも、He can run the car fast.のrunは、走っているのは主語のheじゃないよな。自動車のほうで、彼自身じゃない。
もっと言えば、He can run fast.  は、fastを取っ払っても He can run. で基本の意味は通じるけど、
He can run the car fast. のほうは、fastを取っても意味は通じるけど、the carを取ったら意味が通じない、というか、全然違う意味になってしまうわな。
凡太 あ、ほんとだ。確かにそうです。はい。

だから、この2つのrunは全然違う言葉だともいえるよな。意味が違うし、使い方も違う。
He can run fast. のrunは、主語さえあれば文になるし、「走る」っていう意味も変わらない。
でも、He can run the car fast.  の run は、the carっていう、「走らせるもの」、つまり「主語が行う動作の対象物」があって初めて意味をなすわけだ。逆に言えば、動詞が表す動作の対象物となるものを動詞の後ろにくっつけないと意味をなさない
「ハナコはトマトをうまく洗う」という文もそうだ。「うまく」のwell(副詞)はなくても文になるけど、「トマト」って言葉がないと意味をなさない。
で、この、動詞の後ろに直接くっついている名詞を「目的語」っていうんだ。
凡太 目的語? 動作の対象となるもの……。

そだね~。
で、目的語は名詞なのよ。その名詞に「歳取った犬(an old dog)」みたいに形容詞がくっついていたり、「ハナコが飼っているペットの名前(the name of Hanako's pet)」みたいな、いくつかの言葉の集まりでひとかたまりの意味を作るものがきたりすることもあるけど、基本的に目的語っていうのは名詞だ、って覚えておいて。
ほんでもって、動詞には、単独で使える動詞と目的語を取らないと意味をなさない、つまり使えない動詞っていうのがあるんだな。
単独で使える動詞自動詞目的語を伴う動詞他動詞、っていう。
文法用語って、なんか好きになれないかもしれないけど、この程度は覚えておいたほうがいいぞ。教養として。
同じ動詞でも、自動詞と他動詞の両方の使い方ができる動詞っていうのもいっぱいある。
I can run fast. のrunは自動詞
I can run the car fast. のrunは他動詞、ってわけだな。

He runs a big company. (あいつはでかい会社を経営してる。)
のrunsも他動詞だね。
runっていう動詞の持つ意味、ニュアンスっていうか、イメージっていうか……そういうのもなんとなく分かるだろ。
「走らせる」っていう使い方から、「動かす」「操縦する」「うまく切り盛りする」「回していく」みたいな感じで意味が広がって、会社なんかを「経営する」っていう意味にもなったんだろうなあ……って想像する。そういうのが大事なんだよ。
単に辞書や単語帳に出ているからって「run = 経営する」って丸暗記するより、イメージを膨らませて覚えるほうが忘れないし、知らなかった意味や使い方をしている文に出くわしたときも、意味が想像しやすい。そういうのが大事なのよ、言葉を学ぶときはね。
そうそう、さっきチラッと言った、
I have a good sleep every night.
(おいらは毎晩よく寝ている。)
っていう文も、a good sleep(よい眠り=深い眠り) が動詞 have の目的語になっている文だね。
この have も「持つ」っていう意味よりも、もっと広い意味を持っているなって分かるだろ?
そういう風に、言葉に対する感覚を磨いていく、イメージを広げていくってことが大事なんだ。

じゃあ、今日はここまでにしておこうか。
凡太 はい。


今日のポイント:


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