27 名詞的用法の不定詞  練習問題


To finish the work in three weeks is difficult.
(その仕事を3週間で終わらせることは難しい。)

It is difficult to finish the work in three weeks.


郷センセ  名詞的用法の不定詞といっても、動詞の目的語になるときは want to ~ みたいに、to込みの動詞として覚えたほうが楽だし確実。ここでも要は、文例をいろいろ知ることだね。
じゃあ、やってみようか。

1. ポチは屋根の上で寝るのが好きだ。

2. ポチにとって犬小屋の中で寝るのは居心地が悪いのかもね。(It を主語にして。居心地が悪い:uncomfortable)

3. 僕の夢は世界一速いマラソンランナーになることです。

4. 言うこととすることは別だ(口ばかりじゃなくて実行しろ、という意味)

5. 彼女は運転をやめることに決めた。(決断する:decide)

6. 観戦するならどんなスポーツがすき?(「見るのが好き」と考える)

7. (6に答えて)陸上競技を見るのが好き。(陸上競技:track and field)

8. 作るより買ったほうが楽だよ。(楽だ=簡単だ:easy 比較級の easier を使って)

9. ハナコはポチを無理矢理犬小屋に押し込もうとしたがだめだった。(try を使って。押し込む:push ~ into …)

10. 試しに別の鋏を使ってみた。(鋏:scissors)




答え

1. ポチは屋根の上で寝るのが好きだ。
Pochi likes to sleep on the roof.
「~するのが好き」はlike to ~ 。「屋根の上で」の「屋根」は特定の屋根だから on the roof とする。
ちなみにこれが enjoy を使えば、
Pochi enjoys sleeping on the roof.
と、動名詞を使う。

ただ、running とか jogging といった語は、ほぼ完全に普通の名詞(ランニング、ジョギング)として認知されているので、like running といってもおかしくはないだろう。
こういうのを試験に出して like の後に ~ing をつけたら×、とかやるのはダサい試験だと思うなあ。やだね~。


2. ポチにとって犬小屋の中で寝るのは居心地が悪いのかもね。(It を主語にして) It may be uncomfortable for Pochi to sleep in his doghouse.
これは超難問かも。
It is … for─ to ~.
……というIt… to ~. 構文を使ってみた。
「ここで寝るのは居心地悪い」 を、「ここで寝ること」(to sleep here)を主語にして文を作ると、
To sleep here is uncomfortable.
となる。これを It … to ~. 構文にすれば、
It is uncomfortable to sleep here.
となる。この It は to sleep here をさしている「仮主語」。
ここに「彼にとって」という、to sleep here の「意味上の主語」を、
for … の形で入れ込むと、
It is uncomfortable for him to sleep here.
になる。この him をポチに、here を in his doghouse にすれば、
It is uncomfortable for Pochi to sleep in his doghouse.
になる。それに「かもしれない」という意味を表す助動詞 may を加えて、
It may be uncomfortable for Pochi to sleep in his doghouse.
……となったわけ。

uncomfortable という形容詞は、打ち消しの un がついていることで分かるように、comfortable(居心地がいい、気持ちいい、快適だ)という形容詞の反意語。発音に注意。発音は weblio などですぐに確認できる。
ただ、weblio のお姉さんはすっげ~早口なので、goo辞書なんかのほうが発音は分かりやすいかな。

一見とんでもなく難しそうな文でも、しっかり文の構造を見抜いていけば、案外簡単な文なのだなと分かるはず。


3. 僕の夢は世界一速いマラソンランナーになることです。
My dream is to be the fastest marathon runner in the world.
My dream is ~. という文の補語の部分に「世界一速いランナーになること」という名詞的な意味の語句を不定詞で入れただけの文。
「~になる」は become や get でいえるが、この場合はただのbe動詞でもいい。
「速いランナー」は a fast runner だが、「いちばん速い」は fast の最上級 fastest で、さらに the が必要。「いちばん」は特定の一人、一つ、だから the ということかな。まあ、単純に「最上級には the をつける」と覚えておけばいい。


4. 言うこととすることは別だ(口ばかりじゃなくて実行しろ、という意味)
Saying is one thing and doing is another.
これは有名な格言。日本語では「言うは(やす)し、行うは(かた)し」なんていうね。
言うだけなら簡単だけど、それを実行するのは大変なのよ、という意味。
この saying と doing は「~すること」という意味の動名詞だが、名詞的用法の不定詞でも同じことはいえる。
To say is one thing and to do is another.
……となるわけだが、格言、ことわざとしてよく使われているのは動名詞のほうらしいので、そっちで覚えておこう。

この A is one thing and B is another.
(A と B は別のことだ)
という言い方は定番のフレーズなので、一緒に覚えておきたい。
one、other、another、the other、others、some、none ……といった言葉の使い分けは、簡単には理解できないと思うが、一つ一つ使い方や理屈を知ることは楽しい。

one:「何か一つ」(不特定のもので単数、あるいは数えられないもの)

Do you want apples?
Give me one.
(一つくれ)

some:「あるもの(単数も複数も)」「いくつかのもの(複数)」…… one が複数になったような感じ

Do you want apples?
Give me some.
(何個かくれ)

other:「その他の~」(普通は複数の名詞について、some で示したグループ以外のグループをさす)

Any other question(s)?
(他に質問は?)

another:an+other だから、あるものの「その他」のグループの中にある不特定の1つ(1人)

That's another solution.
(それは別解だね)

※another には one more の意味もある。
Have another cup of tea?
(お茶をもう一杯いかが?)

the other:最初から2つが限定され、そのうちの1つを one としたとき、残った「もう片方」をさす。最初に2つを示して、そのうち1つが決まれば、残りは1つしかないので特定されるため the がつく。

Here are two books. One is mine, and the other is yours.
(ここに本が2冊ある。1冊は私ので、もう1冊はきみのだ。)

others:漠然と「その他のもの(複数)、人々、他人(複数)」

Don't follow others blindly.
(付和雷同するな)
※follow は「~に従う、追従する」、blindly は「盲目的に」

none:noone の複数、あるいは数えられないものに使って「まったくない」の意味。

None of them were alive.
(彼らの内誰一人生きていなかった)

……まあ、一つ一つ、出てくるたびに思い出しながら覚えよう。


5. 彼女は運転をやめることに決めた。(決断する:decide)
She decided to stop driving.
decide ~(~を決断する、決める)という動詞も、目的語に不定詞を取って「~することを決める」という使い方ができる。
ここでは to stop が続いているけれど、stop という動詞は動名詞を目的語にとる動詞だから、「運転することをやめる」は stop to drive ではなくて、stop driving としなくちゃいけない。


6. 観戦するならどんなスポーツがすき?(「見るのが好き」と考える)
What sport do you like to watch?
「観戦するなら」を一字一句英語にしようとしても難しいから、ザックリと簡単な英文でいえないだろうかと考える。
そのためには、この問いにはどんな答え方をするだろう、と考えてみる。
「~を見るのが好きだ」という答えになるはず。
「私はテレビを見るのが好きだ」なら、
I like to watch TV.
この文の TV の部分を疑問詞 what にしてきく疑問文は、
What do you like to watch?
(何を見るのが好きなのか?)
となるはず。意味はなんかちょっと変な感じだけれど、文法的にはこうなる。
この文の what を「どんなスポーツを」とすればいいから、
What sport do you like to watch?
とすればいい。
whatに名詞をつけて「どんな~」という意味を表す例としては、
what color(何色?)
what time(何時?)
what language(何語?)
what subject(何の教科?)
……と、いくらでもある。

ちなみに、like は目的語に不定詞も動名詞もとれる。意味もほとんど同じ。
I like to watch TV.
は、
I like watching TV.
といってもまったくOK。むしろ「テレビを見るのが好き」ならwatching のほうが自然かもしれない。


7. (6に答えて)陸上競技を見るのが好き。(陸上競技:track and field)
I like to watch track and field athletics games.
単に track and field でもいいし、athletics games だけでも通じる。
like to watch は like watching でもOK。


8. 作るより買ったほうが楽だよ。(楽だ=簡単だ:easy 比較級の easier を使って)
To buy is easier than to make it.
A is 比較級 than B. は、
「BよりAのほうが(より)~だ」の意味。
「~すること」というのを名詞的用法の不定詞を使った文。
仮主語の it をたてて、
It is easier to buy than to make it.
といってもいい。
違う発想で「~したほうがいい」という意味で should を使えば、
You should buy it (rather) than make it.
といえばいい。「楽だ」という語は出てこないが、「作る」と「買う」を比較して「買う」ほうがいいといっているわけだから、「その方が早いよ」「よほど楽だよ」というニュアンスは含まれるだろう。
rather than ~ は「~よりもむしろ……」という言い方で、よく使うので覚えておこう。


9. ハナコはポチを無理矢理犬小屋に押し込もうとしたがだめだった。(try を使って)
Hanako tried to push Pochi into the doghouse but failed.
try to ~ で「~しようとする」「~することを試みる」。「無理矢理」は訳さなくていい、というよりも try to do にすでにそのニュアンスが含まれているし、「ポチを犬小屋に押し込む」という行為がすでに無理矢理な感じだから、十分だ。
push 目的語 into ~ という語順にも注意。push into Pochi ではない。into(~の中に向かって)という前置詞は doghouse のほうにつながる。
「犬小屋」は特定の犬小屋なので the をつける。「Pochiの」の意味で his doghouse としてもいい。
fail は「失敗する」。規則動詞で、これも to do を目的語に取れる動詞。

Do not fail to come!
(必ず来いよ!)


10. 試しに別の鋏を使ってみた。(鋏:scissors)
I tried using another pair of scissors.
これは意地悪問題。できなくても全然OK。
try は不定詞を目的語にとって(try to ~)「~しようとする」の意味だが、実は動名詞を目的語にとることもでき、その場合は意味が変わる。
try ~ing は「試しに~してみる」という意味。
I tried using it.
(試しにそれを使ってみた=気楽に試してみた感じ)

I tried to use it.
(それを使おうとした=なかなかうまくいかなかった、という感じ)

ちなみに、want は目的語に不定詞をとる動詞だといったけれど、実は目的語に動名詞がくることもある。ただし、そのときは「~したい」ではなく、「~することが必要だ」という、全然違う意味になるんだ。
My phone wants repairing.
(俺のケータイは修理が必要だ。)
この want ~ing は need ~ing ということもできる。意味はほぼ同じだ。

で、これをよく見ると、主語と動名詞は受動態の関係になっているね。
need to で言い換えれば、
My phone needs to be repaired.
っていう、受け身の形になる。
そのへんも注意したいね。
意地悪な教師がいる学校では、入試問題にこういうひねくれた問題を出したりするのよ。

My phone needs to be repaired.
= My phone needs (   ).
ア. repairing イ. repaired ウ. to repair エ. being repaired

……みたいなね。やだね~。

ん? こういうのわざわざ出してきて、俺も性格悪いのか?
いやいや、こういう細かい違いを知ることを楽しもうよ、ということさ。
意地悪問題が多い入試問題は、一種のゲームだと思うしかない。だったら、ゲームを楽しむしかないだろ。

「鋏」は刃が2つついているので scissors と複数形で使う。another は an+other だから、別の不特定の1つ、という意味だが、複数形にそのままつけてしまっていいのか不安だったので、ていねいに another pair of ~ としておいた。
鋏一丁は a pair of scissors だから、another pair of scissors としておけば絶対間違いない。


……とまあ、簡単だよ、といっていた不定詞の名詞的用法も、こうしていろんな文を作ってみると、なかなか奥が深いね。
このところ解説がどんどん長くなっているけど、一種の「読み物」だと思って、嫌がらずに楽しんでくれよ。


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