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31. 前置詞


郷センセ郷センセ:  今日も生徒は凡太か。
さてと、俺の特別講義もそろそろ終わりに近づいてきた。
もちろん、まだ教えていないことは山ほどあるんだけど、俺が教えても他の誰かが教えても同じようなことは、別に俺がやる必要はないし、すでに幹の部分は大方終わっているから、栄養を吸い上げる幹ができたら、あとの枝葉や、成長していく過程は、自力でできるはずだからね。

今日はもう、ほとんど雑談的に「前置詞」の話でもするかな。

前置詞は「前に置く」って書くけど、何の前かといえば……? なんだ?
凡太 名詞の前です。

そだね~。名詞の前に置くのが前置詞。
日本語にはない品詞だけど、近いのは日本語では「助詞」だろうな。
でも、英語の前置詞は日本語の助詞よりずっと多種多様だ。
前置詞は、いちいち人から教えてもらうようなもんじゃない。自分で一つ一つ覚えていくしかない。
ただ、2つだけアドバイスしておきたいんだ。
1つ目は、「日本語訳ではなく、イメージで覚えろ」ってことだ。

このことでよく使われる例が on の意味だ。

Tama is on the floor(床).
Tama is on the desk(机).
Tama is on the wall(壁).
Tama is on the ceiling(天井).

↑これ、全部すぐにイメージできるか?


凡太 イメージする……うわぁ……タマが……怖いっす。

そういうことじゃなくて、on の後ろの名詞との位置関係をイメージできるかってこと。
on は日本語訳にしたとき「~の上に」って訳されることが多いけれど、on の本来の意味は「~の上」ではなく「~に接している」ということなんだ。
だから、「床の上」「机の上」はもちろんのこと、壁や天井に張り付いている状態も on なんだな。


上の絵だと、
There is a picture on the wall.
だし、
There is nothing on the chair.
だね。

場所を表す前置詞だと、あとは at、in、over、under、by、beside……なんかはよく使うよね。
こういうのは似たような意味や反対の意味を表す前置詞をグループ分けして、その違いや意味のニュアンスを意識しながら覚えていくといい。

例えば、at と in は使い分けが難しい。
We playd at the park.
We played in the park.

どちらも「公園で遊んだ」という意味で正しいけれど、ニュアンスが違う。
at のほうが「目的地」というか、特定の場所をはっきり示している感じが強いかな。
in は範囲が広い。「北海道に住んでいる」なんていうときに at は使わない。live in Hokkaido だ。

それと、at は「~に向かって」「面して」という感じも表すね。
at the desk は「机に向かっている」だ。
Hanako was at the desk.
だと、ハナコは机に座って(座っているのは椅子の上だけど)何かしていた感じだけど、
Tama was at the desk.
だと、ちょっと???ってなるね。タマは机に向かって何をしていたのか? と。勉強するわけでもないだろうに……と。

でも、Tama was in the desk. は、ギリありえるね。机の引き出しの中にいた、というような意味になる。
Hanako was in the desk. は、まずありえないな。マジックショーみたいなことになる。

at the door は「ドアのそばに」「ドアの前に」と訳されることが多いけれど、これも at が何らかの目的というか、意識がそこに向いているニュアンスをもつ前置詞だと分かっていれば、これからドアをノックして中に入ろうとしているのかな、中から誰かが応答してくれるのを待っているのかな、というイメージがわく。
これが beside the door とかだと、単に「ドアのそばに」「ドアのすぐ横に」という物理的な位置関係を表しているだけの感じで、鉢植えとかの、何か動かないものがそこにあるようなイメージかな。

over と on はどちらも「~の上に」と訳されることが多いけれど、この2つはまったく違う。on はすでに説明したように「~の上」ではなく「~に接している」という状態を表すのに対して、over というのは「(離れた状態で)上に」なんだな。
Tama is on the desk.
は机の上に乗っかっているわけだけど、
Tama is over the desk.
だと、机から離れて上にいるから、それこそ天井から下がっている照明のコードに巻き付いてぶら下がってるような感じ。

凡太 怖すぎるっす……

そだね~。怖いね~、これは。アオダイショウなんかはよく木に登って枝に張り付いていたりするから、over my head(俺の頭上に)ってことがあるね~。あれは怖いね~。事前に見えていれば心構えができるけど、いきなり上を見たらいた、ってのは怖すぎるね~。

under は「~の下に」って訳されることが多いけど、これは over の逆だと思えばいい。
Tama was under the desk.
はいくらでもありえるね。
凡太 タマはなんで放し飼いなんすか。

それはハナコにきいてくれ。

場所だけじゃなくて、動きを伴う感じの前置詞も、イメージや意味するところの違いをしっかり頭に思い描く習慣をつけておくことが大事だ。

go to school や go to the station の to は、go や come といった移動や動作を表す動詞と一緒に使って「到着点」に向かうことを表しているけれど、for を使うと、「目的」「~を求めて」というような意味合いが強くなる。
go for a doctor だと、「医者を呼びに行く」という感じ。

toward は「方向性」を表すニュアンス。
go toward the river(川のほうへ向かう)

at は場所を表すときは、目的を持って「~に向かって」というニュアンスだといったけど、動きを表す動詞と一緒に使うときも同じだね。
He shot the last arrow at the target.
(彼は的をめがけて最後の矢を放った。)
He dashed at the door.
(ドアに向かって突進した)
これは、
He dashed for the door.
ともいえるし、
He dashed toward the door.
ともいえる。
for the door だと、ドアが閉まる前になんとか入りたい、みたいな感じがあるし、toward だと単に方向をいっているだけ、という感じかな。

……とまあ、こういうニュアンスの違いなんかを楽しみながら覚えていくしかないのよ、前置詞ってのは。

もう1つ例を出そうかな。
日本語では「で」っていう助詞をいろんな手段を表す意味で使うよな。

ナイフ切る(道具の手段)
クルマ行く(交通手段)
英語書く(言語などの手段)

これが英語だと、

cut with a knife
go by car、in one's car
write in English

……と、全部違う前置詞になる。
これをいちいち、「with は手段を表す~で、の『で』」なんて覚えるのはアホだ。
手段を表すのに、手で持つ道具なんかの場合は with 、もっと一般的なイメージだと by で、by の後に交通手段がきたら冠詞はつけない……とか、一つ一つの状況や条件、後ろにくる名詞の種類によって「イメージする」ことが大切だ。
OKかな?
凡太 ……はい……

もう1つ、前置詞を使う上で絶対に意識しなければいけないことがある。
それは動詞の後ろにいきなり前置詞がくる場合だ。
これはその前の動詞が自動詞だっていう証拠になる。
  1. He bought a mansion.
    (豪邸を買った)

  2. He lived in a mansion.
    (豪邸に住んでいた)
mansion っていうのは、日本では多層階の集合住宅をさす言葉になっているけど、英語では本来は「豪邸」「でかくてゴージャスな家」って意味なんだな。
で、それはいいとして、上の 1 には前置詞がないけど、2 には前置詞 in があるね。
1 では、a mansion は bought の目的語で、SVO の文だけど、
2 では、a mansion は live の目的語ではない。in という前置詞がついているからだ。
in a mansion で「豪邸に」という副詞句になっていて、live は目的語がないから自動詞だ。

自動詞なのか他動詞なのか、動詞のほうを常に意識することも、前置詞を使う上では大切なことなんだな。
これは形容詞的用法の不定詞を使うときなんかにも重要になる。
The house was too expensive to buy.
(その家は買うには高すぎた=高すぎて買えなかった)
という場合、the house は buy の目的語に相当するから、to buy をつけるだけでいいけれど、
The house was too big to live in.
(その家は住むにはでかすぎた=あまりにもでかいので住む気がしない)
という場合、the house は live の目的語ではない(この文でのlive は自動詞なので the house を目的語にできない)ので、不定詞にしたときも in は必要になる。
まあ、実際の会話なんかでは省略しちゃうことが多々あるだろうけれど、本来は in が必要なんだよな。

前置詞が必要か否かということでは、arrive at と reach がよく試験問題になるね。

When will he arrive at the airport?
= When will he ( ) the airport?

なんて穴埋め問題ね。
答えは reach 。
arrive は「~に到着する」という場合、自動詞だから、at とか in(目的地が国など、広いエリアの場合は in も使う)という前置詞が必要だけど、reach は他動詞なので前置詞は使わない、という、これまたクイズみたいな問題。
似たようなのに、

なんかがある。
visit Kyoto とはいうけれど、visit at Kyoto とはいわない。
そんなんで英語力を試験するなよ、っていいたいけど、試験問題の定番になってるから覚えるしかない。

ただ、
call on him は visit him とほぼ同じ意味(彼を訪ねる)だけど、call him といったら単に「彼を呼ぶ」という違う意味になってしまうから、こういうときの前置詞の有無はものすごく大切だね。

さらには、here、there、home みたいな、場所を表す「副詞」がつくと、自動詞でも前置詞は使わない、ということは重要。
Stay here!(ここにいろ)
× Stay at here!

ただし「ここから」みたいに、起点をいう場合は、 from here っていうことはある。

……とまあ、前置詞を覚えていく上で大切なこと、コツみたいなことを今回は説明したわけよ。

あとは自分でやんなさい。コツとか考え方を身につけた後は、自分でやっていけるだろ。
前置詞の解説なんて、今の時代ならネット上を検索すると、ていねいな解説をしてくれているサイトがごまんとある。そういうのを見てもいいし、とにかく、前置詞を含んだ英文(もちろん正しい英文に限るけど)に触れるたびに、前置詞の使い方と意味のニュアンスを吸収することだな。
OKかな?
凡太 はい。

ほんじゃ、今日はここまでにしておくよ。
これも一応練習問題作っておくか。ふうう……。





今日のポイント


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